内容紹介
長年教育現場で子どもたちを見守り続け「人は人の中で居場所を見つけ、自己肯定感や自尊感情を培っていくもの」と語る著者が、利便性と危険が隣り合わせの仮想空間の急速な広がりに危機感を覚え、現実に向き合ってリアルな判断力を養っていく大切さを訴える。
版元コメント
はじめに
(…前略…)
年々、増え続ける不登校。二〇二五年十月末に文部科学省が発表した小・中学校の不登校児童生徒数は前年度から七千四百八十八人増えて三十五万三千九百七十人となり、十二年連続で過去最多となった。特に小学生の不登校が増加しているという。その要因として「無気力、不安」が半数で、さらに「生活の乱れ・非行・遊び」「友人関係」「親子のかかわり方」等があげられ、対策としては「学びの場の確保」「校内支援体制の強化」と同時に「オンライン学習の出席扱い」を推進している。
それぞれの自治体をみても、取り組みに大きな違いはない。学校現場でも一人一台タブレットの時代。私は、子どもたちの無気力や不安の大きな要因の一つに、急激に進むデジタル化も影響していると考えている。
今の子どもたちは、物心がついたときはすでに家族の間にどっぷりとインターネットが入り込んでいる。学校からの連絡も友だちとの会話もSNS。学習のためにと家庭に持ち帰ったタブレットで朝方までゲームをしたり、会ったこともない「知らない人」を昔からの友人のように感じて一晩中SNSを通じておしゃべりをしたり。人と人との間に入り込んだゲームやスマホ。向き合い、語り合う関係はなくなりつつあるのだろうか。
長時間向き合っているのは家族や友人ではなく液晶画面。それは本当の居場所になるのかと思うのは、私だけではないだろう。人は、人の中に居場所を見つけ、自分の存在や家族との幸せな空間を見つけるものだと思っている。ネットが悪いわけではない。その前に培わなければならないことがあるのを忘れてはいけない。
私は、主宰している「こうちねっと見守り会議」で「子どものネット利用に関する全国研修会」を行っている。衆議院会館で開催したときに参加してくれた編集者の方に声をかけられ、「カトリック生活」という月刊誌で連載を開始したのが二〇一九年の三月。自分の取り組みを振り返り、今後の活動のあり方を明確にしていく絶好の機会をいただいた。
二〇二四年三月まで続いた連載をもとに、目まぐるしく変わるネット社会を改めて見直し、今だからこそ伝えなければならないことを加筆して一冊の本としてまとめることとなった。
(…後略…)
目次を表示
はじめに
第1章 ゲームを取りあげるだけでは、解決にならない
誰か一人のせいにはできない現実
○過去最多
○初めて受けた相談は
○彼女は息子に向き合い、希望を捨てなかった
試行錯誤の先に
○Aくんの場合――向き合うこと
○Bくんの場合――「何をしていいかわからない」
○Cくんの場合――原因はわかっていても、知識が追いつかなかった
問題は子どもだけじゃない
○お父さんのゲーム
○お母さん、頑張れ!
○「お父さん、出番ですよ」
○「お父さん、出番ですよ」その後――楽しいことを見つけた
○みんなで、一緒に
第2章 SNSの時代に
世界規模で進むデジタル化の中で
○彼女は自らの存在を消した
○「侮辱罪」を知っていますか
○そのとき、どうする?
○フィルタリング
振り回される日常
○SNSは生活に欠かせないものとなった
○話はラインで
○孤独は子どもの心に食い込んでいる
○やめたいと思うこともあるけれど
本当に必要なことは
○家族の中の「孤食」
○どうしたらいいかわからない
○人は人の中で生きる
第3章 現代社会は何を失ってしまったのか
何に縛られているんだろう
○社会の変化と子どもたち
○空白の時間を過ごしてきた
○「かもしれない」という強迫観念
バーチャル空間で感動を共有できるのか
○コミュニケーションはできている
○運動会の光景は
○連絡網はライン
本当につながっていますか
○バーチャルな関係性ってありですか
○取り越し苦労と笑われたけれど
○お店屋さんごっこ
○目と目を合わせてつながって!
第4章 あなたは誰とつながっていますか
どう生きるのかということ
○注目されたい
○自分を好きになろう
○消えることのない記憶
現実から目をそらさないで
○本当に必要?
○悔やんでも時間は戻らない
○顔を合わせてあいさつを
○移りゆく景色の中で
○ランドセルのなかみ、教えて!
楽しいことを見つけよう
○ワクワク ドキドキを思い出せ
○輪ゴムの魔力
○特製! 空中散歩の紙飛行機
○あなた自身も変わる努力を
第5章 SNSは孤独を癒すことができるのか
社会正義ってなんだろう
○振り返りの中で
○閉ざされたままの子どもたち
○正義とは、生きる力
スマホありきの現代社会
○私の感じた孤独という恐怖
○情報弱者って誰のこと?
○「おいていかれる」~高齢者学級での講演から~
居場所って、楽しいところだね
○笑顔がいちばん
○あんこ入りホットケーキを作ろう!
○やってみようか
○おとなのリハビリ
○ばあちゃんち
○ちっちゃなちっちゃな文化展~好き! を見つけよう~
おわりに~伝えたいことはたくさんある